前田記念工学振興財団山田一宇賞を受賞しました
投稿|2023年06月26日 更新|
この度,わたしの学位論文『構築費用の空間的差異と移動費用を考慮したネットワークデザインに関する研究』が,
令和5年度前田記念工学振興財団山田一宇賞を受賞しました.
学生時代に打ち込んだ研究が認められたのは素直に嬉しいものです. また,成果を広く発信する意味でも,顕彰に積極的に応募するのは重要なのではないかと思います. 応募するのに励みになりそうな気付きとして,倍率は手が届かないほど大きくないということです. 今回の応募対象だと,「建築」×「過去3年の学位論文」なので,母数は5,60といったところでしょうか. その中から3件選ばれたので,倍率はおよそ20倍.高倍率ではありますが,全く望みがないほどではないように思います. なにより,一所懸命に取り組んだ成果であるならば,自信を持ってお披露目の場に送り出してあげたいものです. 選考からもれたとしても,成果がプレシャスであることには変わりありません(→ あなたがやるからこそ研究には意味がある)
本受賞で感動したのは,授賞理由に批判が含まれていたことです.授賞理由を一部引用すると, 『関数モデルの検証が必要なだけでなく,そもそも関数を数式で表すことは可能か,あるいは,さらに遡れば,目的関数の設定そのものが社会的, 工学的に妥当か,という見方もありうる.』という内容でした. 会社員をやっている今となっては,学生の時ほど議論に時間を割くことができていません. 自分の研究に対する他者からの批判は,論文に対する査読くらいになってしまいました. そのような状況の中で,目先の研究成果だけでなく,社会や工学的意義を問い直すような批判を賜われることは,この上ない幸せに感じます. また,批判をもらえたということから,選考委員の方々がわたしの論文を読んでくださり,その上で考えてくださったことがうかがえます. わたしの研究がだれかの知的思考に貢献できたと思うと,学術に寄与できた気がして嬉しくなります.
最近は研究することに対して言い知れぬ閉塞感のようなものを感じています. おそらくそれは,企業でする研究に抱いている像と学生のときに思い描いていた研究はかくあるべきという像にギャップがあるからだと思います. 本受賞が,研究はかくあるべきという像に再度輪郭を与え,今身を置いている環境での研究の指針になるように,精進を続けたいと思います.