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『データインフォームドな都市と交通』が出版されました

投稿|2026年10月30日  更新|


東京大学に着任して以来,東京大学モビリティ・イノベーション連携研究機構 社会連携研究部門「データインフォームド都市・交通学(Data-informed Transit and Urban Management)」(略称:DTUM)に参画してまいりました(→webサイト). 都市,交通,建築というスケールの違う空間を対象に,それぞれ大口研究室,関本・渋谷研究グループ,本間研究室が, 阪急阪神ホールディングスが所有するデータを用いて,空間のあり方や活動の動態,そして,より良い空間づくりのための知見を得るべく研究しています. そしてこのたび,これまでのDTUMの活動の成果をまとめた書籍『データインフォームドな都市と交通 データを起点とした対話と共創の新たなまちづくりの挑戦』が出版されました. それに合わせて,出版記念の講演会が10月23日(金)に行われ,分担著者のひとりとして登壇しました.

“データインフォームド”と枕についているのは, データを起点としつつも,最終的な意思決定が人の手によって行われることを意識しているからです.

数年前に“データドリブン”という言葉が,一世を風靡しました. しかしながら,現在はその言葉を耳にする機会が減ったように感じます.

“データドリブン”という言葉が持つイメージのひとつは,乱暴に表現すれば 「とりあえず膨大に蓄積されたデータを活用すれば, 何らかの知見や意思決定が,適切な分析によって自動的に導かれる」といったものではないでしょうか? その意味で,インターネット上にある膨大なテキストデータを学習させ,人間があらかじめ想定していなかった能力を獲得した大規模言語モデルは, その最たる成功例と言えるでしょう. “データドリブン”という言葉をあまり聞かなくなったのは,大規模言語モデルがそのイメージを体現してしまったからなだけかもしれません.

ただ,このイメージの“データドリブン”だけでは,知見や意思決定の妥当性が保証されない,というのが個人的な考えで, その限界が露見してきたから,この言葉を口にする人が減ったのだと思っています. 本来的に,データも意思決定も,それらに先行して人の意図や目的が存在します. 逆に,それらなしにデータを集めたり作ろうとすることは本質的に困難で, 目的なき意思決定も,想像しがたいものです.

一方で,データから思いがけない傾向や関係性を発見し,そこから新たな仮説や目的を見出すことにも,大きな意味があります. いわゆるデータマイニングのような探索的なアプローチは,その典型でしょう. ただ,そこで得られた発見にどのような意味を見出し,次に何を問うべきかを考えるのは,やはり人の役割です.

目的があって,データに根拠を求めて,意思決定する. ときには,データから得られた発見によって,当初の目的そのものを問い直す. そうやって,目的とデータとを行ったり来たりして,より良い意思決定に近づいていくのが重要なのだと思います.

データの役割や活用方法を自分の中で整理できたのは, 出版記念講演会で,予定になかったクロストークへの参加を通じてのことでした. 予定外の参加を快く受け入れてくださった,佐伯さま,馬場さま,大口先生,本間先生,長谷川さま,あらためてありがとうございました. これからも,“データインフォームド”な建築計画学を追究していきたいと思います.

田端祥太
e-mail: tbtgoat.contact[at]gmail.com